高分子ミセルとPEG修飾リポソームの比較においては、PEG修飾リポソームは細胞内にほとんど取り込まれないが、高分子ミセルは細胞内に取り込まれることが示唆された。一方、ナノキャリアの組織浸透性に関する研究では、これまでに、低い血管密度と厚い間質のために高分子の集積性が著しく低下している膵がんモデルに対して、腫瘍血管の透過性を一時的に高めるTGF-β阻害剤の投与によって、60nmのアドリアマイシン(ADR)内包高分子ミセルが腫瘍深部まで到達できることが確認されていた為に、本年度は、30nmの蛍光標識されたダハプラチン(DACHPt)内包ミセルを開発し、同様な評価を行ったところ、DACHPt内包ミセルはTGF-β阻害剤の投与無しの条件の条件においても腫瘍深部まで到達し、高い制ガン活性示すことが明らかとなった。これらの結果は、これまで知られてなかった100nm以下のナノ粒子のナノキャリアとしての有用性を明らかにした初めての研究であり、関連分野に大きなインパクトを与えるものと確信される。一方、カンプトテシン(CPT)内包ミセルについては、本年度はポリマーの合成と高分子ミセルの調製を行い、光増感剤内包ミセルとの併用によって、光毒性が出ない条件でCPT内包ミセルの細胞毒性が7倍以上に高まることが確認された。本成果は、制がん剤内包ナノキャリアの活性の光照射によるON/OFF制御に成功した初めての研究である。
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