研究課題
高分子ミセルの粒径とin vivo機能の関連を明らかにするために、サイズの異なるDACHPt内包ミセルを調製し、それらのヒト膵がんBxPC3、マウスメラノーマB16F10、マウス大腸がんClon-26細胞の皮下移植モデルに対する制がん活性を評価した。その結果、BxPC3およびB16F10の固形がんに対しては、30nmのミセルのみが優れた制がん活性を示したが、大腸がん(C-26)に対しては、30nmと80nmのミセルは同等の制がん活性を示すことが確認された。また、B16F10の肺転移モデルに対しては、30nmと80nmのミセルは同等の制がん活性を示した。これらの結果は、固形がんに対するナノキャリアの集積性および組織浸透性は、がんの組織構築とナノキャリアのサイズに大きく依存することを示唆しているものと考えられる。上記の結果に基づいて、平成21年度は、サイズの異なる蛍光標識DACHPt内包ミセルのがん組織への集積性および組織浸透性を検討する予定である。一方、トリブロック共重合体から形成される3層高分子ミセル型遺伝子ベクターに関しては、全身投与後にがん組織における蛍光タンパク質の遺伝子発現が確認された。そこで平成21年度は、治療遺伝子としてsFlt-1を使用し、血管新生阻害治療の効果を検討する予定である。また、上記の3層高分子ミセルの中間層にデンドリマーフタロシアニンを搭載することによって光応答機能を賦与し、ナノデバイスの全身投与による光選択的遺伝子導入を実現したいと考えている。最後に、光増感剤内包ミセルとカンプトテシン内包ミセルの併用治療に関しては、両者を同時に担がんマウスに投与し、がん組織に光照射を行ったところ、それぞれの単独治療よりも有意に優れた制がん活性が確認された。今後は、光増感剤内包ミセルとカンプトテシン内包ミセルの機能を一体化した超分子デバイスを構築する予定である。
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