研究課題
高分子ミセル型DDSの組織浸透性に関して、30nmおよび80nmのDACHPt内包ミセルを異なる蛍光色素で標識し同時にマウスに投与した時の蛍光の分布の違いを評価したところ、マウス大腸がんC-26モデルではサイズによる分布の違いは確認されなかったが、ヒト膵臓がんBxPC3モデルでは80nmのミセルが腫瘍血管の辺縁部に局在したのに対して30nmのミセルはがん組織の深部にまで浸透することが明らかになった。さらに、Spring-8を利用した組織切片の蛍光X線解析によってPtの分布を評価したところ、上記と同様に30nmのミセルの投与によってより深部までPtが分布していることが明らかとなった。以上のように本研究によって、膵臓がん等の難治がんモデルに対してがん組織の深部にまで薬剤を送達するためにはナノキャリアのサイズが極めて重要であることが明らかとなった。一方、トリブロック共重合体から形成される3層高分子ミセル型遺伝子ベクターに関しては、前年度までに全身投与後にがん組織における蛍光タンパク質の遺伝子発現が確認された為に、本年度は、治療遺伝子としてsFlt-1を使用し、血管新生阻害治療の効果を検討した結果、有意な制がん活性が得られることが確認された。また、上記の3層高分子ミセルの中間層にデンドリマーフタロシアニンを搭載することによって光応答機能を賦与したナノデバイスに関して、in vivoで固形がんに対する光選択的遺伝子導入を検討したが、現在までに光照射による遺伝子発現効率の向上が確認されていない。現在、光照射条件の最適化を行って再検討中である。最後に、光増感剤内包ミセルとカンプトテシン内包ミセルの併用治療に関しては、光照射による制がん活性の向上が確認され、光照射選択的にミセルからカンプトテシンのリリースが起こっていることが確認された。
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Molecular Pharmaceutics (in press, (印刷中)掲載確定)
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