本研究の目的は、これまで学術論文としての公表が皆無に近い、サッカーにおける「巧み」なボールコントロール技術に関する総合的なバイオメカニクス研究を行い、この成果を学術分野ならびに指導現場において幅広く公表することである。本研究目的に基づき、平成20年度においては、前年度に実施したサッカーのフェイント動作に関する実験において得られたデータの分析を中心に研究を進めた。本研究の結果、フェイント所要時間はサッカー経験年数にともなって短縮することや、フェイント所要時間が、フェイント動作中の身体重心の振幅 (特に水平方向) ときわめて強く関連することなどが分かった。スムースな身体重心移動が巧みなフェイント動作の要点であることは、指導の現場では経験的には指摘されていたものの、本研究結果はこの仮説をはじめて裏付ける貴重な客観的資料であると考えられる。なお、本研究成果は国内の関連学会において公表を終えており、現在論文として投稿の準備を進めている。 平成20年度には、サッカーのスキルに関する総合的な研究の一環として、キック動作の左右対称性を運動力学的観点から検討する研究も行った。本研究の結果から、サッカーのインサイドキック動作は、運動力学的にみるとサッカー経験の有無を問わず左右できわめて類似することが分かった。本研究の成果は、国際学会において公表を終えており、平成21年度において書籍として公表される予定である。
|