20年度は頭椎大刀の作製技法と変遷の検討に着目し、中国地方、近畿地方、東海地方・関東地方・東北地方にて資料調査を実施した。頭椎大刀は、肉眼観察で確認できる製法技法に関する属性が、他の種類の装飾大刀に比較して相対的に少ない。このため、装飾大刀研究全体に照らしても、製作技法に着目した検討はこれまであまりされてこなかった。本研究でポータブル蛍光X線分析計を導入したことにより、初めて頭椎大刀を製作技法の点から検討するためのデータが収集できたと考える。 実際の資料調査にあたっては、準素鞘の大刀については一振りあたり30から40ポイント、飾り鞘の大刀については50から60ポイントを測定し、現状で1000近い測定データが収集できている。この結果から、柄頭、切羽、切羽縁金物、柄巻、鍔、鞘口筒金具、足間、鞘間筒金具、鞘尻金具など各装具の製作技法が明らかになり、製作技法にもとづいた分類が可能であると認識された。 また、同時に実施した考古学的な資料調査の所見から照らし合わせることにより、従来より統一した見解が得られなかった。頭椎大刀の変遷観を批判的に再検討することが可能となると期待できる。 20年度に収集したデータは現在整理中であり、21年度順治論考として成果を公表してゆく予定である。
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