本研究では、古墳時代装飾大刀を対象として、ポータブル蛍光X線を考古学的な資料調査に導入した。考古学的な肉眼観察と同時に、元素同定をおこない、自然科学分析の裏付けをもち、かつ網羅的なデータの蓄積に立脚した製作技法の研究を目指したものである。 今年度は、前年度までに引き続き、頭椎大刀の調査を継続するとともに、あらたに龍鳳文環頭大刀の網羅的調査を開始した。その結果、柄頭の鋳造技法をはじめとする、装具の製作技法についての所見を蓄積することができた。頭椎大刀については、前年度はでに実施した頭椎大刀の調査のデータをもとに、国際学会、学会での発表、および論文の執筆をおこなった。そのうえで、これまでの調査データを総括的に整理し装飾大刀全体の変遷についても再検討を加えた。 本研究の実施により、日本列島出土の装飾大刀を網羅的に分析したデータを蓄積することに成功した。このデータは今後、装飾大刀の研究のみならず、当該時期の金工品研究全体に資する貴重な調査データとなると期待される。
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