研究課題
地球規模の環境変動下において、生態系の炭素循環解明は非常に重要な研究課題になってきている。しかしながら、生態系の炭素循環を生態学的側面および物質動態的側面の両面から研究するのは容易ではない。一方、大気CO_2の放射性炭素14(Δ^<14>C)値は米ソ冷戦下の大気核実験によって近年大きく変化したことが知られている。CO_2を光合成によって固定した植物、それを利用した動物、さらにそれらが分解された有機物は、もともとの大気のΔ^<14>C値を保存しているため、炭素循環において「時間軸を表す時計」として用いることができる。そこで本研究では、^<14>Cの天然存在比を用いた生態系研究の手法を構築し、生態系の時間軸構造の解明を目指す。本年度は、研究を効率的に行なうために、京都大学生態学研究センターに新たなグラファイト精製用ガラスライン及びグラファイト化用電気炉・ターゲット作成設備を設置し、グラファイトを精密かつ迅速に作成するための前処理方法を確立した。そして水域生態系研究として、琵琶湖集水域犬上川および芹川における研究を開始した。水域生態系では、付着藻類、水生昆虫群集、魚類を対象として^<14>C分析を行なうとともに、食物網構造研究手法として定着している炭素・窒素の安定同位体分析も行なった。陸域生態系としては、土壌有機物の分解過程が重要であるため、北大苫小牧演習林において植物遺体(枯死した葉、枝リター)、土壌腐植、土壌層および土壌動物群集の分析前処理を行った。生成されたグラファイトは、国立環境研究所の加速器質量分析計(AMS)を用いて分析予定である。また、^<14>C天然存在比を用いた研究の有効性をアピールするため、学会発表および論文発表を行った。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Functional Ecology 22(印刷中)