LCAの概念が国際的に普及した現在において、中国、韓国、台湾においてLCAデータベースの開発に向けた検討が行われているが、これらはいずれもインベントリ分析のみであり、影響評価は未着手の状況である。本研究では、我が国で開発されたLCLA手法を基礎としつつ、海外での環境負荷による環境影響を適切に評価できるアジア版のLCIA手法を開発し、その有用性について事例研究を通じて検証することで、上記課題の解決を図ることを目標とする。 本年度は、以下の内容について研究を行った。 (1) アジア各国におけるLCIA用評価係数を算定するためのプログラム開発 日本において開発されたLIMEに採用されたモデルを各国のLCIA手法の基調にすることで、既存の手法を最大限に活かした研究開発を行った。ここで開発する手法は、(i)運命分析、(ii)暴露評価、(面被害評価、(iv)影響評価で構成される。本年度は、LIMEで評価の対象としている地域規模の影響領域の中で、特に大きな環境影響が既にアジア各国において発生している領域(都市域大気汚染、有害化学物質、生態毒性)を対象として評価係数算定プログラムを構築した。 (2) 評価係数算定プログラム用の各国パラメータの収集 評価係数算定プログラムを構成するステップごとに、関係諸国の社会的背景を反映する以下のパラメータを収集した。 (i)運命分析 : 気温や降水量、風速といった気象データ、国土面積や流域面積などの地形データ (ii) 暴露評価 : 人口分布などレセプタの分布状況および魚摂取量といった生活様式に関係するデータ (iii) 面被害評価 : 暴露量増分に伴う障害発生確率の変化に関するためのデータ (iv) 影響評価 : 被害の発生件数の期待値を被害指標に変換するためのデータ 以上の検討を通じて、アジア各国における影響評価係数を得るためのインフラが揃った。今後はさらに関係諸国のパラメータ入手を進めて、アジアを包括的に影響評価を実施することができる評価手法を提供する。
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