研究課題
平成21年度は、連鎖移動反応を応用する方向性で重合酵素の回収および再利用にって検討を行った。まず、大腸菌を用いたインビボの実験から、重合酵素と連鎖移動剤のみで連鎖移動反応が進行していることを示唆する結果を得た。この知見を試験管内合成系に適用し、効率的に重合酵素と生成ポリマーを分離させる基礎条件の検討を行った。さらに、疎水性基板を反応場とした酵素重合法についても検討を行い、従来の顆粒を形成させながら重合する方法との重合収率の比較を行った。その結果、表面での重合反応では酵素活性が極端に低くなっており、顆粒形成での重合の方が効率的であることが分かった。これらの結果をうけて、アルケン酸を出発原料とした試験管内ポリエステル合成経路の効率化について検討を行った。特に、アルケン酸に補酵素Aを付加することを簡便に行うための条件検討を行い、バイオポリエステル熱分解物の副生成物を用いると効率的かつ簡便に付加反応が進行することを見出した。これを利用して、実際にクロトン酸からバイオポリエステル[ポリヒドロキシブタン酸(PHB)]を試験管内合成し、その分子量について測定を行った。その結果、分子量が400万を超える超高分子量体のポリエステルが合成できていることが確認できた。分子量の高いポリエステルは、高強度繊維に加工でき利用価値が高い。そのため、熱分解物を用いたケミカルリサイクルにより、付加価値の高いポリマーに再生できたことになる。一方で、反応収率は60%程度であった。これは、回分系で反応を行ったためであり、反応の連続化により高い収率が達成できると考えられるが、それには技術的に解決すべき課題があることが明らかになった。最後に、回分系においてスケールアップの検討を行い、ポリエステルの大量生成が可能であることを確かめた。
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