ナノスケール系の量子輸送特性は、コンダクタンスの量子化など量子効果が顕著に現れ学術的に興味深いとともに、ナノスケールトランジスタやナノ配線材料への応用研究のために重要な研究課題である。そこで、独自に開発してきた密度汎関数理論に基づく第一原理電気伝導計算手法を主に用いてナノコンタクトの量子輸送特性を解析してきた。第一原理リカージョン伝達行列法、積分方程式を用いた第一原理電気伝導計算法、非平衡グリーン関数法等の計算理論の整備を進めた。それらを用いて、ナノコンタクトにおける伝導チャネルの数、チャネル透過率、原子軌道とチャネルの関係、原子細線のバンド構造との関係、共鳴トンネル描像と一次元バンド描像、ポテンシャルドロップ、バイアス電圧依存性、それらの細線長依存性や金属電極とのコンタクトの効果を明らかにした。また、ナノカーボン系における金属電極のコンタクトによる電子状態変化、電気伝導度の影響、多端子電極コンタクトによる電子状態変化と伝導特性変化について明らかにした。ナノコンタクトの熱伝導特性の解析手法の整備を行い、伝導特性における形状、欠陥の効果を明らかにした。さらに、O(N)時間依存拡散伝導法の開発により、弾道領域から拡散領域までの統一伝導計算を行い、伝導度、平均自由行程、移動度、位相緩和長、およびそれらの温度依存性を解析し、不純物散乱とフォノン散乱の効果、およびその温度依存性を明らかにした。
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