UVフォトリソグラフィーを用いて石英基板上に5μmのギャップをもつAu対向電極を作製した。ギャップ部に0.05wt%Ni(CH_3COO)_2水溶液を滴下し、室温乾燥後に700℃でエタノールCVDを行うことでギャップ部にCNTを直接成長させた。引き続き、パラタングステン五水和物を硝酸分解法によりタングステン酸(H_2WO_4)とした後、水に対して0.1wt%のH_2WO_4を展開し、0.1wt%H_2WO_4懸濁液を得た。これをマイクロインジェクターを用いてCNTに滴下後、不活性雰囲気で加熱することで0.1wt%WO_3-CNT複合化センサとし、5ppm NO_2に対するセンサ応答(感度)を測定した。このセンサはCNT単独のセンサに比べて約4倍程度の高感度を示し、0.2wt%以上の添加量においてWO_3同士の導電パスが形成されることで、WO_3のn型としての挙動がCNTのp型としての挙動を上回り、センサ応答が減少するという新しい知見を得た(業績1)。 また、WO_3と同様にn型半導体の挙動を示すSnO_2をCNTの内側および外側に析出させることでセンサ応答を測定した。内包よりも外側に析出させたSnO_2-CNTセンサにおいて高感度が得られた。これは、CNTの外側に分散担持された酸化物との間でp-n接合が形成されることで、空間電荷層の厚みが増加する一方で、NO_2の吸着によって空間電荷層の厚みが減少することを示唆する結果であり、STMの電子濃度分布計測においてもこの現象に対応した傾向を示すと予想される。STM計測は高配向焼結グラファイト(HOPG)での空気中と真空中での違いを電子濃度分布として観察することに成功しているが、酸化物担持CNTにおいては明瞭な差を観察できていない。今後はSTMのシグナル強度を増加させることで空間電荷層の厚みを電子濃度分布として計測できるようにする。
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