平成20年度は、平成19年度の基礎的研究成果を統合し、応用的な光MEMSデバイスの試作を行った。以下に具体的な研究業績について述べる。 スタンピング転写を用いることによって大きな利点を有する光学応用のMEMSデバイスとして、可動ミラーなどを組み込んだアクティブ光学シートが挙げられる。通常のMEMSプロセスでは作成が大変な3次元構造も、複数回のスタンピング転写により容易に作成できる場合がある。スタンピング転写で実現する応用的なデバイスとして、可動ミラーの下にミラー駆動用の櫛歯型電極をもつ静電駆動型可動ミラーアレイを対象とした。この櫛歯型電極は上下方向にかみ合い、動くため通常のMEMSプロセスでは製作が大変なものである。 スタンピング転写は1回の転写のみでなく多種の基板からの多段の転写が可能である。下部の櫛歯電極と上部の櫛歯電極をもつミラーを順にスタンピング転写することで作成した。櫛歯電極のサイズとして、櫛歯の太さを10μm、櫛歯と櫛歯の間の距離を20μmとした。この櫛歯電極が2つ上下にかみ合うため、上下の櫛歯電極の隙間は設計上5μmとなる。スタンピング転写を行なった結果、位置ずれは2.3μmであり、上部の櫛歯電極が下部の櫛歯電極にかみ合うように配置することができた。また300Vの電圧を印加し、静電気によってミラーを駆動した。3×3のミラーアレイを作成した。駆動電極がミラーの下にあるため、デバイスの占有面積に対するミラーの有効面積の比(fill factor)を大きくすることができ、fill factorとして0.85を実現した。
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