本研究の目的は、申請者がこれまでに発案したダイナミックマイクロアレイを利用して、一細胞レベルでの網羅的な解析が可能なマイクロ流体システムを実現することである。 ゲノム配列が解明され、その配列の意味を理解するポストゲノムが発展し、一つ一つのタンパク質の機能が明らかになってきた。最近では、これら個々のタンパク質がどのようなネットワークで機能しているのか網羅的に調べる研究アプローチが盛んに行なわれている。この際、少量の薬品で、大量に実験が行なえること、また最後に大量のサンプルの中から一つ一つ取り出し、PCRによるDNAの増幅・配列読み取りや、タンパク質の機能解析、細胞の培養などのポストプロセスができることが重要である。 そこで、本研究では、このダイナミックマイクロアレイを応用し、一細胞レベルでの網羅的な解析に応用するための実験システムを完成させることにした。昨年度までに、一万個レベルの細胞のアレイ化を実現するために、まずは、細胞サイズのビーズのアレイ化を検討した。さらに取り出しに細胞へのダメージを軽減させるための流路デザインを検討した。これまでには、レーザの照射によりバブルを発生させていたが、熱に拠るダメージが危惧されてきた。そのため、バブル発生源をサンプルから遠ざける機構を検討した。これらの実験を効率的に実施するデバイスを作成するために、従来の2次元的なデバイス作成ではなくは、3次元的デザイン(例えば、サンプル直下にあるバブル発生用の空間や、W/O作成時に水溶液が壁につかない同軸円柱流路など)の検討も開始した。
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