高齢化社会に対応すべく、電動車いすを始めとする生活支援機器はますます身近になり、生活のいたるところで活躍を始めている。また、ロボティクス技術の発達に伴い、介護ロボットのようなインテリジェントな機能を有する生活支援機器が開発されつつある。それに伴い、生活支援機器による人体との接触事故といった生命を脅かす事故の発生が問題となっている。そこで、生活支援機器による1. 人体との接触事故、2. 交通事故、3. 機器の破損による事故、に対する安全性を総合的に評価する手法を開発する目的で、以下の1〜3に示す実験・研究を行った。 1. ロードセルなどのセンサーと高速度ビデオカメラを用いて開発した衝撃力測定装置を、昨年度の実験結果に基づいて改良した。さらに、人体軟組織、硬組織を模擬したモデルを用いて、衝撃力が 生体軟組織を通じて骨に伝わるメカニズムの分析を行い、力の時間的伝播の様子を明らかにした。 2. ドライバーの運転能力(認知・判断・操作)を評価するために開発した模擬運転システム(ドライブシミュレータ)を、車両走行速度、実験課題などを調整・改良することによって、高齢者特有の交通事故発生メカニズムを分析するための実験(あまり速度が速くない状況での危険回避課題)を実施可能にした。さらに、改良後の模擬運転システムを用いた模擬走行実験により、システムの有用性を検定し、以前のシステムよりも高齢者の交通挙動の解析精度が向上することを明らかにした。 3. 破壊起点となる可能性の高い、生活支援機器部材の接合部(溶接部)を模擬した疲労試験片を用いた二軸疲労試験を実施し、複雑な応力下における疲労破壊挙動を明らかにした。
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