研究概要 |
津波被害把握のための情報として高解像度衛星画像に着目し, 2004年インド洋大津波災害によるマングローブの破壊状況の分析と数値解析との統合によるマングローブ林の被害関数を構築した. 被害関数とは, 対象とする被害(家屋被害, 人的被害, 植生被害)の破壊率を, 津波氾濫流の流体力学的な諸量の関数として表現する, 新しい津波被害想定指標である. タイ・ナムケム, インドネシア・バンダアチェにおいて2004年インド洋大津波によるマングローブの破壊率を評価した結果, 津波氾濫流の流速が2m/sを超えると, その破壊率は急激に増加し, 津波の減勢効果を失うことが明らかになった. 19年度に構築した人的被害に関する被害関数を用いて, インド洋沿岸諸国の津波リスクを明らかにした, 各地域の津波危険度を, 津波が発生した際に発生し得る人的被害の期待値として定量的に示すことができた. この結果は, 津波防災対策推進地域の優先順位付けに利用できると考えられる. 次に, インド洋沿岸において, 津波による人的被害の軽減に効果的な沖合観測ブイの設置位置を推定した. 主にミャンマー, ニコバル, インドネシアが津波観測情報発信国となればインド洋全体での人的被害の軽減が可能であることが分かった. 各地の人的被害軽減率PMRを推計した結果, 広範囲に多目的ブイのネットワークを構築すれば人的被害の大幅削減が可能であることが分かった. 特にインド・スリランカ・バングラディシュ・タイなどでは最大96\%の軽減が可能であることが分かった.
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