研究概要 |
抗マラリア剤アルテミシニンを構造モチーフとした多様性指向型合成を検討した。多様性指向型合成では、後に修飾可能な官能基を骨格に組み込みつつ、三次元構造多様性に富んだ低分子群を系統的に短工程(5-7ステップ)で合成する。本研究では、縮環部に相当する三連続炭素中心の立体化学を(syn-syn,syn-anti,anti-anti)と系統的に改変することにより、、骨格の三次元構造特性が異なる三系統のアルテミシニン類似三環性化合物を設計した。水酸基のキレーションを利用した共役付加と生じたニトリルアニオンのアルキル化により、高立体選択的に3〜4成分を一挙に連結するワンポット反応を採用し、三連続炭素中心の立体化学の多様性に富んだ鎖状前駆体を系統的に合成することができた。更に、オレフィン置換様式の違い(2置換、末端)を利用して、連続オレフィンメタセシスによる環化モードを制御し、骨格の多様性に富んだテルペン類似三環性化合物を高収率で合成することができた。次に、三環性骨格に組み込んだ共役ジエン部位をs-cis型に異性化させてから、光増感反応により一重項酸素を付加させ、アルテミシニンの生理活性発現に深く関与するエンドペルオキシドの導入に成功した。さらに、抗感染症(マラリア・トリパノソーマ)活性試験に必要なサンプル量の確保(>50種)にも成功し、北里研究所熱帯病研究センターと共同で、有望な抗トリパノソーマ活性(in vitro)を発現するリード化合物を数種選別するところまで研究を進展させることができた。
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