研究概要 |
既存の抗マラリア剤の中で最も有望視されているアルテミシニンを構造モチーフとして天然物類似低分子群を設計・合成し、抗感染症活性物質の探索に着手した。本研究では、アルテミシニンの三環性骨格縮環部に相当するsp^3炭素の立体化学を系統的に改変する独自の合成戦略を考案し、三次元構造多様性に富んだ低分子ライブラリーの構築に取り組んだ。立体化学や環化モードをプログラム可能な合成プロセスを開発し、三環性化合物群(三系統・六種類)を迅速(<5工程)に構築した(Orq.Lett.2009, 11, 601.)。環化反応の際に骨格に組み込んだ共役ジエンを活用することで、エンドペルオキシドの導入位置や立体化学を改変したアルテミシンアナログを数種類合成できた。更に、ペルオキシドの酸素を窒素に置換したアナログの合成にも成功した。上記の取組みと並行して、数多くの高酸化型セスキテルペンにみられるアズレン型母骨格に対して、四連続のC-N結合を集積化させ、複雑なトポロジーの五環性化合物をワンポットで立体選択的に合成する手法を開発した(Chem.Commun.2010)。 合成した低分子群に対し、北里研究所と共同で抗原虫感染症(マラリア・トリパノソーマ)活性をスクリーニングした。骨格や立体化学を指標とした構造活性相関を検討し、活性発現に必要な低分子の構造を絞り込みながら、抗感染症リード化合物を数種類見出すことに成功した(投稿準備中)。
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