研究課題
平成19年度までに開発した、アザ電子環状反応によるアミノ基選択的な高速標識化法を基盤にして、糖鎖の初めてのPET実験を実現するべく、平成20年度は以下の3項目に焦点を当てて検討した。(1)N-結合型糖タンパク質糖鎖のライブラリー合成 : 本研究では、N-結合型糖タンパク質糖鎖(N-結合型糖鎖)を主なトレーサーとしてPET実験を行うが、まず固相法による様々な糖鎖の供給法を検討した。その結果、JandaJeI^<TM>を担体として順次固相上に効率的なグリコシル化反応を実現することにより、シアル酸を有する初めての複合型N-結合聖糖鎖の固相合成に成功した。(2)糖鎖クラスターの調製 : 天然や合成糖鎖を効率良く特定器官や癌細胞に集積させることを意図して、これら糖鎖のクラスター調製法を検討した。末端にアセチレン基を有するポリリジン型デンドリマーに対して、申請者らが開発したヒスチジンを活性化基とする自己活性化型Huisgen環化反応を実施した。その結果、簡単な単糖や二糖構造だけではなく、N-結合型糖鎖のような複雑な構造を持つ11糖においても、室温、40分で定量的に16分子をクスラスター化させることに成功した。(3)糖鎖クラスターの生体内イメージング : 上記(2)で調製した糖鎖クラスターは、末端にリジン残基を持つように設計した。そこで、平成19年度で開発した標識法を用いて[^<68>Ga]-DOTAで短寿命放射線標識化を行った。まずアザ電子環状反応を用いて糖鎖クラスターをDOTAで標識した後、^<68>Gaの導入とHPLCでの精製を経て迅速に放射線標識化することができた。一方、同様にアザ電子環状反応を用いて蛍光標識化し、これを正常マウスや担癌マウスに導入して蛍光イメージングを実施した。その結果、糖鎖の構造によって、その臓器分布が劇的に変化することを世界で初めて明らかたした。このように、様々な糖鎖糖鎖ライブラリーのPETイメージングやターゲティングを実施する基盤を築いた。
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