平成21年度までに達成した、(i)超高速アザ電子環状反応を用いた標識化プローブの開発と生体高分子のPETイメージング、(ii)フコースやシアル酸を有するN-結合型糖鎖の合成手法、(iii)N-結合型糖鎖クラスタープローブの開発とその正常マウスにおけるPETや蛍光イメージング、および(iv)N-結合型糖鎖の生体分子に対する化学的なエンジニアリング法を基にして、以下の3点を検討した。 1 フコースやシアル酸を持つN-結合型糖鎖合成の固相ライブラリー合成:還元末端にアスパラギン残基、およびフコースやシアル酸を含む、天然から単離することが難しい複合型N-結合型糖鎖の液相合成を初めて達成した。さらに、ライブラリー合成を指向して、JandaJel^<TM>を担体とする糖鎖固相合成法への展開を図った。 2 N-結合型糖鎖クラスターのインビボイメージング:ポリリジン型デンドリマーを基本構造とする天然所結合型糖鎖を蛍光標識して、マウス正常モデルとDLD-1(大腸腺癌株)を移植した癌モデルにおいて、それらのインビボダイナミクスを非侵襲的に比較した。その結果、2者のモデル間で著しい集積やトラフィッキングの相違を観察することに成功し、癌のトレーサーとなるN-結合型糖鎖クラスターを見出した。 3 糖鎖付加人工タンパク質、および人工細胞の創成とインビボイメージング:Wild-typeのマウスから抽出したリンパ球の表層上に対して、超高速アザ電子環状反応を用いて、天然の準結合型糖鎖を効率的に導入した。さらに、このリンパ球に対して、同様にアザ電子環状反応を用いて蛍光標識すると共に、DLD-1(大腸腺癌株)を移植した癌モデルにおいて非侵襲的な蛍光イメージングを行った。その結果、リンパ球の表層に対して化学的にN-結合型糖鎖でエンジニアリングすることにより、癌を認識する人工細胞を有機合成化学的に創製することに成功した。
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