ベトナム人日本語学習者のための日本語教育文法の研究としては、名詞句の習得についてベトナム人学習者に対して質問票によるアンケート調査を行い、名詞句の習得が上級レベルの学習者にとっても難しいことを明らかにした。また他のアジアの言語圏の学習者との比較を行うために、タイ語、マレー語、中国語、韓国語、モンゴル語、シンハラ語、ミャンマー語、フィリピン語の理工系分野の語彙をデータベース化し、比較調査した。その結果ベトナム語は9割以上がsemantic adoptionで、日本語のカタカナ語のようなphonetic adoptionはほとんど行っていないこと、その際多くを漢越語で表示していること、またその語彙は日本語と同じ語順(文字順)のものや、全く異なる語順(文字順)等が錯綜しており類推が非常に難しいことを明らかにした。またベトナム人向け日本語学習支援ツールの開発としてベトナム国家大学外国語大学との共同プロジェクトでCHUTA辞書に参加し、8000語と約30000文の例文入力を行った(2008年8月にリリース予定)。 機械翻訳システムについては、留学生数が多く経済的ニーズの高い理工系分野の機械翻訳システムの開発に着手した。19年度は統計的機械翻訳のための情報収集及び統計的機械翻訳のために必要な対訳コーパスや対訳辞書の作成を行った。精度がある程度保証されるためには30万対以上の例文対が必要とされている。本研究では汎用性の高いコアとなるフレーズをできるだけ抽出し、科学技術用語辞典とつきあわせながら少ない用例数で高い精度をあげることを目指している。
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