ライシテとは、1905 年法によりその20 世紀的な形態が定着した、フランス共和主義に特有の政教分離の形態である。カトリック教会および修道会と、反教権的ないし自由主義的な共和派の対立としてライシテの成立を描き出す歴史の語りには、しかしある重大な問題が内在している。すなわち、その語りには、1980年代以降問題化した、イスラムとライシテという視点が、しばしば欠落しているのである。本課題では、このような欠落がポスト植民地主義的な社会構造に由来するものであるとの仮説に立って、さまざまな側面からの研究を進めた。
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