本年度は、TESボロメータ素子の設計と製作、および、これを極低温に冷却するための冷却システムの設計を重点的に行った。冷却システムは、無冷媒の機械式冷凍機である4Kパルスチューブ冷凍機を用いた液体ヘリウム温度までの冷却系、および、ヘリウム3とヘリウム4を用いた吸着型の極低温冷凍機とそのための熱スイッチであるヒートスイッチの設計を行った。さらに、これらを制御するソフトウェアの基礎を構築した。TESボロメータは主に、温度計である超伝導遷移端温度計(TES;Transision Edge Sensor)、サブミリ波を吸収し熱に変換する吸収体、そして、熱を適切に逃がすための熱リンクから構成される。吸収体及び熱リンクには、シリコン基板に成膜されたシリコン窒化膜とその上にそれぞれ金の薄膜をメッシュ状と細線状に成膜することで構造を形成し、TES温度計にはチタンと金の二層薄膜を用いる。そのために必要な、金属薄膜の成膜の条件出しを行い、これを基にして複数画素のTESボロメータの試作と基礎的な評価を行った。また、観測データを処理するデータ処理系を最適化するために、既にあるボロメータによる観測データを活用して、ボロメータの観測データの処理方法についての調査と検討を行った。上記の成果およびTESボロメータの設計手法について国内学会および国際学会において発表を行うと共にTESボロメータを用いた観測システムの情報収集を行った。
|