今年度は、1)20019年度に開始される欧州原子核研究機構のLHC実験の一つATLAS実験に参加し、bクォークの湯川結合定数測定に重要となるSCTと呼ばれるシリコン検出器の整備と、bbH(->bb)というヒッグス生成崩壊過程の探索感度の調査を行った。また2)将来の実験に備えて、SOIと呼ばれるテクノロジーを用いた。また2)将来の実験に備えて、SOIと呼ばれるテクノロジーを用いた新型シリコン検出器の開発を行った。 1)SCTのモニタリングソフトウェアの開発、特にモニター結果をデータベースに読み書きして検出器の振る舞いを容易に調べるための汎用ツールの開発を行った。このツールを利用して、SCTのノイズレベルを詳細に調査し、ノイズレベルがほぼ設計値通りであることを確認した。この結果を論文として共同執筆中である。また、本研究費によって雇用した研究員が超対称性ヒッグスHがbbH(->bb)と生成・崩壊する過程をシミュレーションにより精査し、超対称性理論のパラメータに依存するが、発見のためにはオーダーとして数10fb^<-1>から100fb^<-1>必要であると結論付けた。 2)高エネルギー加速器研究機構測定器開発室が主導しているSOI検出器の開発に参加し、テスト用読み出しシステムの開発、及び3種類のプロトタイプ検出器のテストを行つた。テスト内容は、バイアス電流vs電圧特性などのアナログ回路の特性調査、信号読み出しテスト、可視光レーザー及びX線・β線等の放射線に対する検出器の応答特性の測定などである。この結果、基本的には粒子検出器として作動していることを確認した。また、backgate bias効果と呼ばれるダイオード特性の変化を観測し、こめ効果の抑制が実用化に向けての最重要課題であると結論付けた。
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