本研究では低い印加電圧でも高効率な新型電子管の研究開発を目的としている。電子管で空間電荷を回避し、印加電圧を下げつつ高効率化を図る新しい着想として、(1)電子ビームの集郡部のビーム電圧を一時的に昇圧する方法(DCエネルギー回収型)、または部分的に昇圧する方法(RF変調昇圧型)、(2)進行方向に変調せずにビームを分散させるように変調をかける方法(円偏波型、ジャイロ方式等)、(3)プラズマ等の中性媒質を用いる方法、その他冷陰極により可能となる多ビームIOT等について研究を行っている。これらの新型電子管を効率的に試験できるように、高圧パルス電源の製造、及び電子管に共通の電子銃や真空チェンバーの製造を行った。電子銃カソードとしてはカーボンナノチューブ及びFEAの冷陰極カソードを利用し、従来電子管の製造で最も手間のかかっていた、ベーキング処理や、最終的にはRF窓を省き、繰り返しの実証試験を大幅に容易にした。またこの冷陰極カソードは実証試験を容易にするだけでなく、日本で製造技術の無いIOTを簡単に製造できる突破口となり得るため、冷陰極自体の性能評価も併せて行い十分な電流密度が確認できた。さらに電子管それぞれについては、PIC法による軸対称、及び3次元シミュレーションを行い詳細なビームの軌跡や空洞形状の決定等を行った結果、シミュレーションによる効率の予測の高かった、円偏波型の電子管と冷陰極によるIOTの入力空洞の試作を行った。これらは中電力の電子管をターゲットとし、大電力クライストロンと同等な、パービアンス及びカソードローデイングにスケールして低電圧での試験を行っている。
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