平成20年度は微細加工装置を用いて本格的にマイクロマシン作製に取り掛かった。まず、微小なパターンを転写するために必要なマスクを安価に製作するため、マスク作製装置を自作した。写真感光板を用いて最小で20ミクロン線幅のパターンを作製することに成功した。また、作製したパターンを用いてドライエッチングならびにウェットエッチングの詳細な条件だしを行った。ドライエッチングについてはCF_4ガスを用い、段差計の測定から400 nm/minという値を得た。ウェットエッチングについてはTMAHを用いて、1ミクロン/minという値をえることができた。これによりいよいよ本格的な微小3次元構造の作製を行う準備が整った。また、カンチレバーの変位を検出するため新たなファイバーレーザー光学系を構築した。具体的には周波数安定度の高い1550 nm帯のDFBレーザーを用いた。カンチレバーとファイバー端面からなるFabry-Perot干渉計を用いて、リアルタイムで0.1 nmの検出分解能を実現した。 また平行してカンチレバーを用いた磁化検出電子スピン共鳴の開発をおこなった。光変調法とロックインアンプを組み合わせた方法により、従来の測定方法より1000倍以上高い感度を実現することに成功した。その結果、定常磁場中では315 GHzの高周波領域まで電子スピン共鳴を観測することに成功した。この値はカンチレバーを用いた電子スピン共鳴としては世界最高周波数にあたる。また、パルス磁場中での測定にも着手し、これまでと比較して2桁程度高い感度を実現した。この成果により、更に高い周波数領域における電子スピン共鳴測定が可能になるものと期待できる。
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