北海道釧路近海の親潮中に平成20年に投入したオプトード(光学式酸素センサー)付き等密度追従型フロート4台は、その南西向き流によって三陸~常磐近海まで流された後、黒潮系水の影響を受けながら東方に向きを変え、2台が亜寒帯前線沿い、1台が亜寒帯境界沿い、1台が黒潮再循環域を漂流しながら日本のはるか東方へ流された。これらのフロートを通じて、水温・塩分・溶存酸素の観測資料を広範囲にわたって収集できた。また2009年9月には、フロート2台が流されていった亜寒帯前線周辺域において、(独)水産総合研究センター東北区水産研究所調査船若鷹丸により集中的な追跡観測を行った。まず中層フロートのオプトード観測と船舶観測の比較から、中層フロートに取り付けたオプトードの性能は、1年以上海中を漂流してもほとんど劣化せず、本研究の解析には十分な観測精度があることを示した。また、複数トレーサー解析による混合比推定法などを適用しながら中層フロートと若鷹丸の観測資料を解析した結果、北太平洋に流出したオホーツク海中層水が、(1)親潮沿岸貫入を通じて亜熱帯循環域中層に広がるだけでなく、(2)亜寒帯前線に沿いながら、無視できない流量を持って広がることを明らかした。上記(1)の結果は、課題代表者らの過去の研究によってすでに示されているが、上記(2)の結果は、本課題によって初めて明らかにされたものである。今後、地球温暖化によって、オホーツク海の海氷生成が顕著に弱まり、オホーツク海中層水が昇温・低酸素化、あるいは、その形成量が減少することが予想されているが、本研究結果に基づいて、オホーツク海の海洋変化が北西太平洋に及ぼす影響を推測できる。
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