(1) 本研究課題に至った背景:三陸~常磐沖合には亜寒帯循環と亜熱帯循環に挟まれた混合水域と呼ばれる海域が広がる。混合水域は親潮系の冷水と黒潮系の暖水が複雑に入り混じり、その混合水が両循環に戻されるため、北太平洋の亜熱帯-亜寒帯循環間の水・熱・物質交換に重要な役割を果たしている。混合水域の形成と循環には、オホーツク海から親潮を通じて流入してくるオホーツク海中層水が力学的に強く関与していることが数値モデルを用いた過去の研究で明らかにされている。 (2) 目的:本研究課題では、観測資料に基づいて、オホーツク海中層水の北太平洋への流出量と変動、広がり方を定量的に調べつつ、混合水域の海洋構造と循環、変動を明らかにする。そのために、温度・塩分・溶存酸素値を用いて、混合水域中層の3つの起源水であるオホーツク海水、東カムチャツカ海流水、黒潮水の各成分(混合比)を求める新しい手法(複数トレーサー解析による混合比推定法)を実用化し、周辺域の観測資料に適用することで、これら3成分の時空間分布と変動を定量的に把握する。特に解析には、調査船の観測資料のほか、溶存酸素センサーを取り付けた中層フロートを複数台、親潮域に投入して、親潮~混合水域を漂流中に得られる観測資料を用いる。 (3) 研究計画:2007年度には過去の資料整理と中層フロートの仕様と投入計画の決定、購入を行い、2008年度末までに中層フロートを投入、2009年度に中層フロートおよび調査船による水温、塩分、溶存酸素の観測、2010年度にはこれらの資料を解析し、得られた成果を公表する。
|