研究概要 |
地震時や原始太陽系星雲形成時の磁場環境を,隕石やシュードタキライトといった岩石から復元することを目的として研究をおこなっている.本年度は台湾・チェールンプ断層を貫くボーリングコア試料の古地磁気測定から昨年度導出した仮説「地震断層すべり時に数百アンペアの地震性電流が発生した」の検証をおこなった.これまでの多くの岩石磁気学の研究から,サブミクロンサイズの磁鉄鉱が磁化を担っている場合は仮説が実証されるが,粗粒なヘマタイトが磁化を担っている場合,地震性電流の仮説は崩れることが知られている.そこで,走査型磁場顕微鏡と電子線散乱回折法(EBSD)を利用して,残留磁化を担っている鉱物がクロムを含有する微細磁鉄鉱粒子であることを確認した.これは地下1000mの断層破砕帯で地震性の電流が発生していた可能性が極めて高いことを示している.隕石中(衝撃溶融脈やダスティーオリビン)の磁化に関して,「低温・長時間で獲得した磁化と高温・短時間で獲得した磁化が等価」であるとする温度・時間等価性が破綻する場合があることを実験的に示し,この等価性の破綻が磁性鉱物の粒径によることを,フラクタル幾何学と磁気スピン理論によって説明した.最後に,30W連続発振グリーンレーザーによるその場スポット加熱装置を走査型磁場顕微鏡に取り込むための技術開発をおこない,将来、岩石・隕石中の微小領域に不均質に分布する磁化を局所段階的に加熱消磁できることを可能にする古磁場推定実験技術を培った.
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