研究概要 |
先カンブリア紀の岩体や衝撃を被ったクレーター・隕石から信頼ある古地磁気情報を得るため、変質・変成部を認識しつつ、古地磁気情報を保持している部位を選択的にピンポイントで測定することを目的として、本年度は下記の研究を実施した。1,隕石中働撃溶融脈の磁化:隕石のもつ残留磁化は、原始惑星系の動的な進化における熱・衝撃変成作用の歴史のため、複雑にかき乱されている。そこで、大規模な衝撃によって形成された溶融脈が形成時の母天体磁場を保持している可能性に着目して、衝撃溶融脈のピンポイント古地磁気測定と高圧鉱物の安定性の研究から、形成時の外部磁場を保持し、その後に熱・衝撃変成作用を被っていないことを証明した。2,スポット段レーザー加熱消磁装置の開発:上記の衝撃溶融脈は数百ミクロンの幅しか持たず、自身は安定な磁化を有するが、周りの基質は不安定な磁化しか持たない。そのため、本来は衝撃溶融脈だけを加熱する必要がある。これまでに、YAG第2高調波レーザーと2色型放射温度計を組み合わせたレーザー消磁装置を開発したが、手動による温度調整のため±50℃が限界だった。そこで、本年度はレーザー光の焦点をずらすことで温度管理を行うことに取り組み、良好な結果を得た。3,インド産シュードタキライトの微細鉱物組織と岩石磁気:北インドで発見された先カンブリア紀のシュードタキライトの古地磁気測定と結晶微細組織の観察から、約20億年前の古磁場を記録している岩相を特定した。4,火星の地殻磁気異常と地下熱水系の研究:日本の次期火星探査計画での科学研究計画提案のため、大学院生の臼井洋一氏とともに、初期火星の大気組成・地殻2分性のレビューを行い、鉄炭酸塩岩に注目することで、火星地殻磁気異常、二酸化炭素の行方、地殻浅部の熱水系の存在との関連性を示した。
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