いわゆる「温暖化後の地球」によく似た過去の時代(=アナログ)を統計的に捜し求めるには、日本列島周辺の暖温帯〜亜熱帯の表層花粉整備が必要である。この研究計画にかかる初年度調査として、沖縄周辺(屋久島〜奄美大島〜沖縄本島)の野外調査を交付申請書の記載にそって実施し、約60点の表層花粉試料を採取した。これらの表層試料は年平均気温20〜24℃にあたる温度域をカバーし、モダンアナログベースの古気温復元範囲を高温方向に最大7℃拡大することができる。これらは過去に実在した温暖期(=間氷期)の気温レベルの上限ならびに中央値の算出精度を向上させることができる。 初年度の成果公表として、上記の研究趣旨を、日本列島の表層花粉整備の現状紹介とともに日本第四紀学界刊行の研究誌(=第四紀研究)の50周年記念シンポジウム特集号に出版した(研究成果欄参照)。 なお当研究計画の前身にあたる房総半島の化石花粉〜生物相調査が、日本第四紀学界の2007年論文賞を受賞したことにともない、9月1日の総会会場における授賞式に参列した。また第四紀通信に受賞の言葉を記した。 またこれと平行して、日本列島周辺海洋底の表層花粉整備計画を立ち上げた。これは厳密には当初の研究計画調書に新しく付加された内容であるが、陸上の表層データセットを周辺に拡張できる意義が大きいこと、また試料には既に採取ずみのピストンコア試料を用いることにより比較的僅かな研究予算で実施できる目処がついたことから、陸上整備との関連計画として企画したものである。試料採取と分析作業については、研究指導の態をとるかたちで茨城大学の修士課程2年、小林結が代行した(研究成果欄参照)。なおこの成果は関連研究集会において代表者奥田により口頭発表もされている(学会発表欄参照)。
|