花粉ベースのモダンアナログ法(MAT)は第四紀後期の古気温を定量復元することにより、IPCCなどによる気温上昇予測に対する規制値を提供できる。しかし復元結果が年平均16℃以上で振り切れるため、現在より2℃以上高い温度域を復元できない欠点があった。そこで本計画では、現在の年平均気温が16℃を超える日本列島の暖温帯・亜熱帯に対して表層花粉整備を企画し、データ空白を埋めることにより上記の振り切れ問題を解消し、最終的に現在より最大7℃温暖な高温域までを描画することを可能にした。 具体的には、平成19年度から4年間かけて紀伊半島南端~南四国~南九州~種子島~屋久島~沖縄~八丈島~青ヶ島などを踏査し、収集した200点以上の表層花粉試料(現生のコケ群落など)を実験室へ持ち帰って花粉分析し、データ化することによってモダンアナログの空白を埋める作業を繰り返した。と同時に、強化されたMAT法を滋賀県琵琶湖~千葉県銚子から別途採取ずみの化石花粉データに対して適用することにより、過去40~80万年の古気候定量復元を再度試みた。その結果は2本の英語論文(Okuda et al ; Tarasov et al.)にまとめられ、NCommおよびEarth Sci Revへ投稿した。 さらに計画調書作成時点(平成18年秋)には未構想だったテーマとして、日本列島海洋底の表層花粉整備を新たに計画し、実施した。具体的にはIMAGESなどにより掘削され、日本各地のコア倉庫に保存されている海洋掘削コア70本あまりから、茨城大学・岡田研究室の支援のもと最上部の泥試料を収集し、陸上表層と同じ手法で分析、データ化した。結果は地球惑星連合大会2011などで口頭発表されると同時に、後の国際誌出版を念頭においた日本語原稿を作成し、成果報告書の一部として綴じ込んだ。
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