研究概要 |
本研究ではプレートを構成する海洋地殻玄武岩とプレート本体のかんらん岩について、相転移カイネティクスを考慮した深さ約800kmまでの「非平衡ミネラロジー」を明らかにする。特に、地球内部に存在する微量な水がカイネティクスに与える影響に着目し、温度と含水量をパラメーターとして非平衡ミネラロジーを構築することを目指す。平成20年度は主に以下のテーマを中心に高圧相転移カイネティクス研究を行った。 1) 海洋地殻玄武岩におけるパイロキシン-ガーネット相転移カイネティクス 沈み込む海洋地殻玄武岩で起こるエクロジャイトーガーネタイト相転移が温度に応じて3つのモデル (パイロキシンがガーネットに完全に固溶する平衡相転移、固溶反応が起こらずパイロキシンからメージャライトガーネットが析出する、メージャライトガーネットが全く出現せずポストパイロキシン相転移が起こる) に分かれることを提案し (Nishi et al., 2008 ; 2009)、それぞれの反応について定量的なカイネティクス実験を進めた。 2) かんらん岩成分の相転移カイネティクスと非平衡ミネラロジー 含水量300-400wt. ppmH_2Oの条件ではポストガーネット相転移は成長律速タイプ、ポストスピネル相転移は核生成律速タイプの相転移を起こし、それぞれかんらん岩プレートの密度減少および660km不連続面の凹凸に影響を与えることが明らかになった (Kubo et al., 2008) 。またマリアナスラブで地震学的に得られた非平衡相転移の深さに関する研究結果と実験データを組み合わせることにより、スラブの含水量や相転移による粘性変化を制約した (Kubo et al.,EPSL投稿中 ; Shimojuku et al., EPSL改訂中)。 3) 2次元X線回折時分割測定による高圧相転移の核生成-成長カイネティクスの観察これまでに行ってきたSiO_2のコーサイト-スティショバイト相転移に関する予備的実験に引き続き、オリビン-スピネル相転移おいても個々の結晶粒が核生成し成長する過程を、2次元X線回折図形の回折斑点挙動から観察することに成功した。
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