研究概要 |
平成19年度,20年度の成果により,気相-液相界面プラズマのシース電場を利用することによって,DNA及びイオン液体がカーボンナノチューブ(CNT)に内包されることが明らかになっているため,本年度は,これらの電気的,光学的特性を測定し,その物性を明らかにする実験を行った. 1.DNAを内包したCNTをチャネルとした電界効果型トランジスタ(FET)を作製し,その電気特性を調べた.その結果,シトシンを内包したCNTでは,DNA照射前のCNTと比較してp型の半導体特性が強まり,グアニンを内包したCNTは全く反対のn型の電気特性を示すことが観測された.これらの特性は,DNAの塩基のイオン化ポテンシャル(酸化還元電位)の差異によって,それぞれ電子アクセプタ及びドナーとして作用するためであることを明らかにした.一方,イオン液体の場合には,正イオンと負イオンでそれぞれn型及びp型の半導体特性を示し,CNTの電気特性を自在に制御することに成功した. 2.紫外光電子分光測定を行うことによって,DNAの各塩基及びCNTのイオン化ポテンシャルを測定し,DNAがCNTの電気特性を変化させるメカニズムを解明した. 3.DNAを内包させたCNTで構成したFETにおいて,その電気特性が紫外・可視領域の光照射によってシフトすることを見出した.さらに,光照射を停止すると電気特性が光照射前の状態に戻り,可逆的な特性を示すことを明らかにした.これら結果は,DNA内包CNTが光スイッチとして応用でき,ナノバイオ光デバイスとして有望な材料であることを示している. 4.DNAとCNTの複合物質の電気特性を低温下(<20K)で測定することによって,クーロン振動やクーロン階段等の量子効果的現象が観測され,DNAがCNT上において量子ドットを形成していることを明らかにした.これらの成果は,量子効果ナノバイオ電子デバイスの実現に大きく寄与できるものである.
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