研究概要 |
赤外・紫外域波長の超短パルスレーザーとクラスターの相互作用は、高エネルギーイオン源や高輝度X線光源開発への応用の観点から精力的に研究が行われている。しかしながらより波長が短い軟X線や真空紫外域のレーザーとクラスターの相互作用の物理はまだ十分に理解されていないのが現状である。 このような観点から、我々は"コヒーレントX線レーザー(波長;13.9nm)とクラスターとの相互作用"を実験的に解明することを試みている。このX線レーザーは、X線領域の汎用光源と比較して格段に高強度・コヒーレンシーに優れている。さらに重要な特長は、レーザー光子エネルギーは89.2eVにも達するために,ご内殻電子(4d)の電離断面積が最も大きくなり、これまで実現不可能であった内殻電離誘起ズラズマの発生が可能となる、という点である。 今年度は、X線レーザー・キセノンクラスター相互作用により発生するイオンを飛行時間分解分析装置にて計測を行い、ダブルオージェと呼ばれる内殻ホール崩壊過程が支配的となることを明らかにした。このような現象は、放射光を用いた同様の実験では観測されておらず、高強度X線にさらされたクラスター特有の現象と考えられる。この非常に興味深い新しい現象は数値計算の結果と共に、最高ランクの物理雑誌であるPhys. Rev. Lett. 誌に投稿し、論文掲載が受理された。 一方、電子分光器を新規に設計・製作し、ダブルオージェ遷移確率の増大メカニズムを電子エネルギー分布計測から明らかにするための準備も進めている。
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