研究概要 |
H20年度は、H19年度に開発した計測装置を完成させ、実際に実験を行い、有意義なデータを得ることに成功した。また、イオン化を考慮した時間発展計算回転波束プログラムを行った。さらに、励起光源の性能向上およびプローブ用の短波長パルスの開発を進めた。具体的な成果は以下の4点にまとめられる。 (1) 光電子-光イオン同時計測装置の動作確認、性能評価、データ解析プログラムの整備を行い、定常的に実験ができる状態になった。本装置を用いて、エタノールの解離性イオン化について調べ、解離チャンネルを分離してイオン化直後の電子状態を測定することに成功した。さらに、レーザーパルスの波形依存性(パルス幅、強度)を明らかにした。770nm,35fs,9TW/cm2のレーザーパルスを用いると、イオン化の際に、電子励起状態のイオンが直接生成し、解離反応が起るが、パルスの強度またはパルス幅を大きくすると電子基底状態のイオンが生成した後、同じパルスの中で電子励起が起こり、解離へと進む経路の寄与が大きくなっていくことがわかった。 (2) 強レーザー場中においてイオン化と動的アライメントが競合するNO中性分子の回転状態に着目し、イオン化の角度依存性を虚数ポテンシャルとして取り扱い回転状態に関する時間依存シュレーディンガー方程式の計算を行った。レーザー強度に依存したイオン化確率をM0-ADK理論に基づいて計算し、虚数ポテンシャルに導入している。 (3) 2.2m長のセルにアルゴンガスを1気圧程度封入し、約2mの焦点距離で、35fsパルスを集光し、フィラメントを起した。その出力をチャープミラー圧縮した結果、フーリエ限界で10fs程度に対応するスペクトル帯域を得ることができた。分散補償が不十分なため、現状では、18fs程度である。 (4) 18fsのパルスを用いた高次高調波発生により、第5高調波として、170nm付近に30nm程度のバンド幅を持つ広帯域UVパルスが得られた。
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