研究概要 |
1)ホウ素置換基をπ共役骨格の側鎖に用いるという独自の分子設計に基づいて,3-ボリルビチオフェンを基本骨格とする一連のホウ素化合物を合成し,これらが固体状態でも高い量子収率で発光する高発光性有機固体として有用であることを明らかにした.この系では,3-ボリルビチオフェンの両末端に用いる置換基により,青色から赤色までのフルカラー発光が可能であり,本分子設計の高い有用性を示すことが出来た. 2)また,含ホウ素π共役系化合物を機能性材料として展開するには,新たなホウ素置換基の開発が重要である.これに対して,ビス(4-ヘキシル-2,6-ジメチルフェニル)ボリル基((HexDm)2B基)を独自に開発し,これを導入したポリ(アリーレンエチニレン)を合成した.これらのポリマーはいずれも一般的な有機溶媒に対して高い溶解性を示すとともに,高発光性のポリマーフイルムを形成することがわかった.さらに,電子求引性と可溶性をあわせもつ置換基としてビス(4-ヘキシル-2,6-トリフルオロメチルフェニル)ボリル基((HexTf)2B基)も新たに開発し,この置換基を導入したチエニルチアゾール誘導体およびビチオフェン誘導体では,(HexTf)2B基の高い電子求引性に基づく特異な電気化学特性および光物性が発現することを明らかにした. 3)さらに,ジベンゾボロール骨格のホウ素上の置換基としてかさ高いMes*基を導入した誘導体の合成に成功した.Mes*基の導入により,過剰のフッ化物イオン存在下においても配位結合を形成せず,電子輸送性材料の新たな基本骨格としての可能性を示すことが出来た. 4)B-N配位結合を有する骨格としてBODIPY骨格に着目し,周辺をフェニル基で置換した一連の誘導体を合成した.これらはいずれも強い赤色の蛍光を示し,有機EL材料の赤色発光のドーパント材料として有用であることを示した. 5)ジチエノ-1,2-ジボリン誘導体の合成と単離に成功した.これは,1,2-ジボリン誘導体として初めての例である.さらに,このジアニオン種の単離にも成功し,X線結晶構造と理論計算の結果から,ビチオフェンにジボレン骨格を導入することより,14π電子系としての性質が発現することを明らかにした.
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