申請者は、これまでに、チチカビ(Geotrichum candidum)由来のアルコール脱水素酵素を超臨界二酸化炭素中で用いる研究を行い、不斉還元反応に成功している。そこで、本研究では、分子生物学的手法により本アルコール脱水素酵素を超臨界二酸化炭素中での反応により適するものへと改良することを目的としている。さらに、どのような性質の酵素が超臨界二酸化炭素中での反応に適するかの系統的な検討も行う予定である。そのために、本年度は、本酵素の大腸菌内での大量発現系の構築へ導くために、チチカビからの酵素の単離精製を行い、さらに、本酵素の諸性質を検討した。チチカビ中には、アセトフェノン誘導体を立体選択的に還元し、光学活性アルコールを生成する酸化還元酵素が、2種存在する。それらはNADH及びNADPH依存性で高い立体選択性、広い基質特異性を有しており、さらに基質中のフッ素置換数を認識するなど、それぞれ異なった立体選択性を示す。それらの酵素の単離精製のために、チチカビの乾燥菌体から両酵素を硫安分画(30-70%)及び各種クロマトグラフィー(HQ:強アニオン交換カラム、HP:疎水カラム、Blue:アフィニティーカラム、ResouceQ:ア、ニオン交換カラム、HAP:ハイドロキシアパタイトカラム、Ge1:ゲルろ過カラム)により単離精製した。その結果、NADH依存酵素が回収率7.1%、NADPH依存酵素が回収率1%で、121倍、131倍に精製された。また、NADH依存酵素については、内部アミノ酸配列の決定にも成功した。
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