研究課題
申請者は、これまでに、チチカビ(Geotrichum candidum)由来のアルコール脱水素酵素を超臨界二酸化炭素甲で用いて、不斉還元反応に成功しており、本研究は、このアルコール脱水素酵素を超臨界二酸化炭素中での反応により適するものへ改良することを目的としている。現在までに、チチカビ中から、アセトフェノン誘導体を立体選択的に還元し、光学活性アルコールを生成する酸化還元酵素を2種類単離精製し、諸性質を検討した。アセトフェノン還元酵素のアミノ酸配列の多くが解明され、さらにこの酵素をコードするDNA配列のほぼ全てを決定することができた。このDNA配列をFASTAによる相同性検索を行ったところG. capitatum由来のN-benzyl-3-pyrrolidinol還元酵素と62%の相同性を示した。一方、フルオロケトン還元酵素も収率5.0%、131倍に精製、単離された。分子量を測定した結果、ヘテロ二量体であると思われる。速度論的解析により、本酵素はジフルオロメチル基>トリフルオロメチル基>モノフルオロメチル基の順にVmaxおよびkcat/Kmが高いことがわかった。内部配列の解析のため、ペプチドシークエンサやMALDI-TOF-MASによる分析を試みたが、既知の酸化還元酵素などとの相同性の一致が見られず、本酵素は新規酵素である可能性が高いと考えられる。また、本酵素を、補酵素であるNADPHを再生するGlucose-6-Phosphate Dehydrogenaseとともに固定化することに成功し、合成に容易に利用することを可能にした。特にセラミック担体にアルデヒド基とPolyethylenimineを付加した担体(Toyonite-200AGA-PEI)を用いた固定化法により、pH安定性と熱安定性が向上した。この固定化酵素の高圧CO_2条件下での安定性を評価したところ、圧力に対して非常に高い安定性を示し、臨界点7.3MPa以上の条件下では、固定化していない酵素と比較して酵素の安定性が著しく向上しており、超臨界CO_2中での酵素利用への可能性を高めることができた。
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