研究概要 |
本年度は以下の2つの項目について研究を実施した。 (1) ナフタレンの触媒的不斉水素化 平成20年度の結果をうけ、1,6-ジアルコキシナフタレン、異なる二つの置換基をもつ2,7-二置換ナフタレンの触媒的不斉水素化をPhTRAP-ルテニウム触媒を用いて試みた。その結果、1,6-ジエトキシナフタレンの触媒的不斉水素化では、1位置換基をもつ側のベンゼン環が68:32の位置選択性で水素化され、79%eeの1,6-ジエトキシテトラリンが得られた。また、2-エトキシ-6-フェニルナフタレンを水素化したところ、79:21の位置選択性で91%eeの2-エトキシ-6-フェニルテトラリンが得られた。この位置選択性は、6位の置換基をo-トリル基にすると立体障害のため96:4まで向上し、生成物の鏡像異性体過剰率は92%eeだった。これは、非対称ナフタレンの水素化において、立体選択性だけでなく、位置選択性の制御にも成功した初めての例である。 (2) キノリンのベンゼン環選択的な触媒的不斉水素化 平成20年度の結果を受け、PhTRAP-ルテニウム錯体を不斉触媒として8-アリールおよびアルキルキノリンの触媒的不斉水素化を試みた。その結果、8位に不斉炭素原子をもつ様々な5,6,7,8-テトラヒドロキノリンが位置選択的に生成し、その鏡像異性体過剰率は67-81%eeだった。この結果は、キノリンのベンゼン環選択的触媒的不斉水素化がアルコキシ置換体だけでなく、様々な光学活性5,6,7,8-テトラヒドロキノリンの合成に有効であることを示している。
|