研究概要 |
π-π相互作用を利用した多孔性ポリオキソメタレート複合体の合成と吸着分離機能開発 構造規定された分子性ユニットから構築される結晶性多孔体は、その分子収着・分離,変換(触媒)機能が分子・原子3レベルで制御されることから活発に研究がなされている。結晶性多孔体の構成ユニットとして芳香族配位子を導入することにより、π-π相互作用を利用した構成ユニット集積化過程の制御や細孔構造の安定化が期待される。本研究では、シリコタングステート[α-SiW_<12>O_<40>]^<4->をカリウムイオン及びピリジン配位子を有する分子性カチオン[Cr_3O(OOCH)_6(C_5H_5N)_3]^+と複合化し、得られた複合体の構造及び分子収着特性を検討した。複合体K_<1.5>[Cr_3O(OOCH)_6(C_5H_5N)_3]_2[Cr_3O(OOCH)_6(C_5H_5N)(CH_3OH)_2]_<0.5>[α-SiW_<12>O_<40>]・2CH_3OH・8H_2O[1・2CH_3OH・8H_2O]の結晶構造を単結晶X線構造解析により得た。複合体1・2CH_3OH・8H_2Oは、シリコタングステートとマクロカチオンのピリジン配位子に囲まれた一次元チャネルを有していた。隣接するマクロカチオンのピリジン配位子の面間距離は3.44-3.59Aであり、π-π相互作用が働いていた。複合体1・2CH_3OH・8H_2Oの結晶溶媒分子は真空排気(298-303K,3h)により脱離し、ゲストフリー体1が生成した。粉末XRDパターンの解析から、結晶溶媒分子の脱離後もチャネル構造は維持されることが明らかとなり、1のチャネルの入口サイズ、チャネル体積は、それぞれ、約30A^2、4.1×10^<-2>cm^3g^<-1>(組成式あたり310A^3)と算出された。ゲストフリー体1には、エタン、エチレン、水、エタノール、1,2-ジクロロメタン等を収着された。これらの分子は、チャネルの入口サイズより小さいことから、チャネル内に収着されたと考えられる。一方、n-ブタン、1-ペンテン、1-ブタノール、1,2-ジクロロプロパン等、よりサイズの大きな分子は収着されず、形状選択的な分子収着特性を示すことが明らかとなった。
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