本研究の目的は、炭素-水素結合などのユビキタスな結合を直接変換し有機骨格を構築する一般的手法の確立である。H19年度は、芳香環やヘテロ芳香環の炭素-水素結合を直接化学変換する新しい触媒の開発に成功した。例えば、芳香族化合物とハロゲン化アリールのクロスカップリングを促進するユニークなロジウム触媒、イリジウム触媒、白金触媒を開発した。いずれの触媒反応も炭酸銀を添加剤として用いるという特徴をもつ。DFT計算を用いた機構解明研究により、遷移金属錯体と炭酸銀の協同的な作用が効率的な炭素-水素結合切断の鍵であることが示唆された。さらに、芳香族化合物とアリールボロン酸の芳香環連結反応が、銅塩で進行することも見出した。材料科学や医農薬開発における最も重要な構造単位のひとつであるビアリール骨格を、合成化学的に最も理想的な炭素-水素結合の触媒的直接変換によって構築した意義は明白である。
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