今年度はジアリールエテンと銀微粒子からなるネットワークにおける光反応性および電気伝導性の光スイッチングについて検討した。金微粒子でのフォトクロミック反応および電導性スイッチングは、以前に確かめていたが、本研究では、銀微粒子でのネットワークについて検討した。 両方にチオール基が付いた分子で銀微粒子ネットワークを形成させ、櫛型電極の上において電導性の光スイッチングを試みた。その結果、コンダクタンスは紫外光の照射とともに増加し、可視光の照射で減少した。その結果、完全に可逆なスイッチング挙動が確認されスイッチング効率は18倍であった。これは、π共役系の組み換えが電気伝導にも有効に働いていることを示しており、情報伝達のスイッチングとして一般性を有していることを意味する。 光照射による、吸光度の増加は一般の光化学反応に見られるように、初期速度が高く、徐々に遅くなっていく挙動を示したが、伝導性の増加は初期速度が遅く、徐々に早くなった。これはネットワークへの光照射がパーコレーション的挙動をすることを示している。 また今年度は、10nm程度の大きさのナノギャップ電極をエレクトロマイグレーション法により作成し、ギャップにジアリールエテンー金微粒子ネットワークを入れた系についての電導挙動、光応答についても検討した。室温付近ではオーミックな電導挙動が確認されたが、10K程度の極低温領域ではクーロンプロッケード現象が確認され、ゲート電圧依存性も認められた。クーロンプロッケードのゲート電圧依存性、すなわちクーロンアイランドは光照射によってデジタル的に変化することがわかった。
|