前年度に開発したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)と固体塩基の酸塩基反応に基づく電解アルコキシ化反応システムを利用することで、種々のラクタム類の電解アルコキシ化を高収率で行うことに成功した。さらに、トリフルオロ酢酸存在下、得られたアルコキシ化体を様々な炭素求核剤と反応させることで炭素-炭素結合形成反応を行うことに成功した。 一方、酢酸やトリフルオロ酢酸と固体塩基の酸塩基反応に基づく共役酸塩基対を支持塩とする、見かけ上支持塩を必要としない新規電解アシルオキシ化反応システムの開発を行った。トリフルオロ酢酸は分子内に強い電子求引基であるトリフルオロメチル基を有するため耐酸化性の溶媒として働き、ベンゼンやシクロアルカン類のような高い酸化電位を有する有機化合物の電解アシルオキシ化を比較的高い電流効率で行うことに成功した。 さらに、「陽極と固体塩基間の活性点分離」を「陽極と炭素求核剤間の活性点分離」へと応用展開し、陽極で生成する基質由来の炭素カチオンと陽極で酸化を受けない炭素求核剤を直接反応させることで、従来法では実現不可能であった新たな炭素-炭素結合形成反応を行うことに成功した。 以上をまとめると、プロトン性溶媒と固体塩基の酸塩基反応に基づく新規電解反応システムを開発するばかりではなく「陽極と固体塩基間の活性点分離」を見出すとともに、活性点分離を基軸とする新たな酸化的炭素-炭素結合形成反応へと展開することに成功した。
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