自殺基質を用いて同定したラベル化部位を標的としたフォーカスドライブラリを作成し、このライブラリから阻害能を有する化合物の探索を行った結果、コレラシアリダーゼに対する世界最強の阻害剤群(4種)を見出すことに成功した。今回見出した阻害剤は親水性の糖残基と疎水性の修飾部位からなる両親媒性構造を有しており、その界面活性剤様効果および分子集合体としてその阻害能を示した可能性が残ることから、2段階の濃度の界面活性剤存在下で阻害脳の調査を行った。その結果、見出された阻害剤全てが界面活性剤の有無にかかわらず強い阻害能を維持していることが確認され、これらの化合物がいずれも真の阻害剤として機能していることが確認された。本阻害剤候補化合物群には疎水性修飾部位にコレステロール誘導体が結合したものもあり、このような分子集合体を形成しやすい化合物でもタンパク質と1対1で結合し、阻害していることが見出されたことは特筆に値する。 また、自殺基質によるラベル化部位の検出においてSDS-PAGEでは標的タンパク質に自殺基質構造が結合していることが確認されているにもかかわらず、MALDI-TOFMSにおいてラベル化部位を検出する際に自殺基質が消失してしまい解析が困難となる例が複数出た。そこで、過去に弱いエステラーゼ活性を有していることが報告されているBSAを標的とし、標識およびMALDI-TOFMSによる結合部位の同定を行ったところ、やはりタンパク質消化に伴いラベル化部位が外れていることが確認された。現在、脱離しにくい構造の探索を行うと共に、標的酵素活性部位内の2カ所のアミノ酸側鎖と共有結合形成可能な化合物群の設計、合成、評価を開始した。
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