近年、急速に開発が進んでいるNanoStrip Gas Counter等の次世代ガスカウンタを光電変換デバイスとして用いることを想定し、本研究では200nm以下の極短波長域に発光するシンチレータ結晶の開発を行うことを目的とした。これにより、「VUVシンチレータ+光電離ガス」とすることができ、より効率的なガスのイオン化が可能となる。その結果、次世代ガスカウンタの高い分解能特性という利点を活かしつつ、装置の高効率化・小型化という技術革新が期待できる。 短時間で結晶を作製できるマイクロ引下げ法を用いて、多様な組成のフッ化物結晶を作製し、発光特性を評価した。200nm以下の発光を実現するためには、Pr^<3+>やNd^<3+>などの5d-4f遷移を利用する必要があり、その結果、Nd: LaF_3において、高輝度かつ短寿命な真空紫外発光が得られることを見出した。発光スペクトル測定の結果、173nmにおける高輝度発光が確認され、透過率測定の結果からは発光ピークの173nmにおいて、78%もの高透過率を有することが分かった。Czhocralski法を用いた結晶育成では、直径2インチもの大きさを持つ単結晶の作製にも成功している。さらに、シンクロトロン放射光を用いた測定により、短寿命発光であることも明らかとなり、真空紫外域発光シンチレータとしての可能性が示された。また、同様のマイクロ引下げ法で結晶育成したNd:Ba固溶体Nd^<3+>:(La_<1-x>Ba_x)F_<3-x>においても、真空紫外発光を確認できており、今後のVUV結晶探索にも期待できる。
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