放射線を検出するには、放射線を光に換えるシンチレータ結晶と光を電気信号に換える光電子増倍管もしくはフォトダイオードが用いられる。光電子増倍管は450nm付近に、フォトダイオードは600nm付近に最大感度波長域を有するため、1895年のレントゲンによるX線の発見以来100年余に渡り、全てのシンチレータ結晶開発者は、中・長波長域に発光する結晶を開発することが一つの重要な必要条件であることを「常識」として研究を行ってきた。それに対し、本研究では200nm以下の極短波長域に発光するシンチレータ結晶の開発行う。見方によっては、当該研究は、既存のシンチレータ設計指針(常識)に対する挑戦とも言えよう。ただし、当該研究は、奇を街った研究を妄想しているわけではなく、後述の通り、検知デバイスに、最近実用化レベルに急成長したNano Strip Gas Counter(NSGC)等の次世代ガスカウンタを用いることを想定した実践的技術基盤に則った構想である。成功すれば、現状、4nm程度の分解能しか持っていないPETなどの機能性情報が得られる医療画像装置において、100-200μmの画期的な高分解能化が実現することとなる。
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