研究概要 |
窒化アルミニウム(AlN)の発光ダイオード(LED)をC面SiC基板上にMOVPE法により作製した。LEDの発光エネルギーの温度依存性は,エキシトン発光エネルギーの温度依存性と良く一致し,LEDの発光はAlNのバンド端発光に由来することを明らかにした。また,得られた発光エネルギーと温度の関係から,LED動作時の発光部の温度上昇値を簡便に見積もる手法を構築した。 LEDの放射特性から,バンド端発光の電場ベクトルEがAlNのc軸方位と平行な方向(E//c)に強く偏光していることを明らかにした。発光強度の放射角度依存性から偏光度を0.995と見積もった。結晶場分裂エネルギー,スピン軌道相互作用エネルギーなどの物性値から光学遷移の振動子強度を計算して偏光度を解析し,観測された強いE//c偏光はAlNの大きな負の結晶場分裂エネルギーに由来することを解明した。 このAlN特有の強いE//c偏光特性により,AlNではc軸方向への発光は弱く,c軸と垂直な方向(m軸やa軸方向)への発光が強い。AlNの各結晶面から光取出し効率を計算した結果,LEDの光取出し面を現在のC面からM面もしくはA面にすることで光取出し効率を25倍も高くできることを理論的につきとめた。実際に,M面6H-SiC基板上に成長したM面AlNのPL測定を行ったところ,従来のC面AlNと比べて6倍強い発光強度が得られた。理論との相違は,現在のところ,M面AlNはC面AlNと比べて転位や積層欠陥の密度が高いためと考えられ,これらの結晶欠陥の低減により,理論どおりのさらに強い発光が期待できる。
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