研究概要 |
(1)新熱酸化理論の拡張 研究代表者が提案した乾燥酸素雰囲気中の酸化(ドライ酸化)の速度方程式を、水蒸気雰囲気中の酸化(ウェット酸化)も記述できるように拡張し、両酸化プロセスを統一的に記述できる一般酸化速度方程式を定式化した。またこの理論の枠組みで、長年の謎であったドライ酸化に見られる非線形な酸素分圧依存性の起源を説明することに成功した。 (2)熱酸化膜中における酸化種の振る舞いの分子動力学シミュレーション 硫究代表者が有するSi,O混在系用の分子動力学シミュレーション技術を用いて、シリコン酸化膜中で、酸素分子の安定サイトがどのように分布しているかを明らかにした。SiO2/Si界面近傍約1nmの領域で、酸素分子のポテンシャルエネルギーが上昇する様子が確認され、研究代表者の新理論の予測と一致する結果が得られた。また、このシミュレーション技術を応用してシリコンナノ細線のモデリングを実施し、酸化皮膜によって誘起されるシリコン細線内部の歪分布を詳細に明らかにした。 (3)Ge,O混在系用原子間相互作用モデルの開発 Si以外のIV族系半導体の熱酸化プロセスと比較するため、研究代表者が有するSi,O混在系用の分子動力学シミュレーション技術をGe,O混在系に拡張した。GeO2構造では、Ge-O-Ge結合角の平衡値が133度であり、Si-O-Si角の144度に比べて狭いこと、Ge-O-Ge結合角の強度がSi-O-Si角に比べて非常に大きいことなどが明らかになった。今後、Si,O系と同様の方法でGeO2/Ge界面構造のモデリングを実施し、両者の熱酸化機構の違いを調査する。
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