研究概要 |
高強度の近赤外フェムト秒レーザーパルスを水に集光すると,多光子吸収によりその集光点で爆発的な水の形態変化が誘起され,衝撃波およびキャビテーションバブルが発生する。本研究では,この衝撃波およびキャビテーションバブルの挙動を明らかにし,それらで細胞やタンパク質の新しい制御を実現することを目的としており,本年度は,これらが細胞に与える影響について明らかにするために下記の実験を行った。 ・フェムト秒レーザーが神経細胞の分化に与える影響の評価 神経幹細胞のモデルとして使われるPC12細胞を用いて,フェムト秒レーザー誘起衝撃波やキャビテーションバブルが,細胞の分化に影響を与えないことを証明した。さらに,初代培養の神経細胞を,その活性を損うことなく,電極基板上にパターニングすることに成功した。 ・フェムト秒レーザーによる心筋モデル細胞の拍動制御 心筋のモデルであるP19CL6細胞の近傍の培養液にフェムト秒レーザーを集光照射し,その挙動を調べた結果,その細胞の活性を損ねることなしに,その拍動を制御することに成功した。 さらに,フェムト秒レーザーを照射できる倒立顕微鏡に原子間力顕微鏡(AFM)を組み込み,衝撃波やキャビテーションバブルを測定できる系を構築した。来年度からこの実験系を用いて,フェムト秒レーザー衝撃波およびキャビテーションバブルを定量化し,生細胞に与える影響を物理的な観点から明らかにしていく。
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