研究課題
高強度の近赤外フェムト秒レーザーパルスを水に集光すると、多光子吸収によりその集光点で爆発的な水の形態変化が誘起され、衝撃波およびキャビテーションバブルが発生する。本研究では、この衝撃波およびキャビテーションバブルの発生過程で生じる衝撃力を原子間力顕微鏡(AFM)により検出できるシステムを構築し、その評価を行っている。本年度は、AFM探針の振動挙動を質点モデルに基づく運動方程式により解析し、レーザー集光点で発生する衝撃力を力積として評価することに成功した。細胞の引きはがしに必要なレーザー強度で発生する力積は、10^<-12>[Ns]オーダーであると見積もられた。高速カメラによる観察結果より、探針に衝撃力が付加される時間はμsオーダーであり、これらの結果は、細胞がμsの時間にμNオーダーの力を受けたことを意味している。一般にレーザトラッピングで細胞に付加される力はpNオーダーであり、フェムト秒レーザーにより誘起される衝撃力により付加される力は、瞬間ではあるがその百万倍に相当することが明らかになった。さらに、AFM探針の代わりに、実験で用いた培養動物細胞を配置した幾何モデルを構築し、その時に細胞が受ける力を評価したの。動物細胞の培養系として、(i)神経細胞の神経軸策にマスト細胞が接着した系、(ii)血管内皮細胞に白血球が接着した系、(iii)上皮細胞がタイトパッキングした系を準備し、フェムト秒レーザーにより発生させた衝撃力を付加した細胞の引きはがし実験を行い、引きはがしのしきい値となるレーザー強度でその集光点で発生する衝撃力を見積もった。(ii)の血管内皮細胞と白血球の接着力については、これまでにCell force spectroscopyにより調べられており、その結果と相関のとれる力が、本手法で評価できていることを示した。(i)と(iii)の培養系における細胞間の接着力は、Cell force spectroscopyで評価することは不可能であり、本研究により初めてその接着力を定量評価することに成功した。
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Proceedings of Micro Total Analysis Systems 2009 : The 13th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences
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http://hskw.jp/activity/Original.htm